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その一言で、少女の脳裏によぎったのは、血の海に横たわった女性…
そして、首と胴が離れた父の姿。
胸を貫かれ息絶えた母の姿。
おそらく姉の方も同じ光景が脳裏に浮かんだのだろう。瞳から一筋の涙が流れた。
このまま走って逃げ切る事は現実不可能だと、後ろから迫る足音から痛感させたれていた。
大して広くもない倉庫街、逃げ道も限られてきていた。
すぐ側まで迫る足音から遠ざかる為、目に付いた扉に手をかけた。
思いがけずすんなりと開いた扉の中は階段になっていた為、走った勢いそのまま入室した2人は階段を転げ落ちることとなった。
唯一の救いは階段の段数が少なく、すぐ踊り場に着いた事と、扉が勝手に閉まり、追っ手の目から逃れた事だろう…
「…っ…痛たたた…」
少女は自分の身に何が起こったのか理解出来ぬまま、身を起こした。
自分の下敷きになっている姉の姿が目に入り、慌てて声をかける。
「お姉ちゃん!!お姉ちゃん!…しっかりして!!」
目を閉じたままの肩を揺すって必死に呼びかけた。少女は自分が無傷なのは、姉が咄嗟に身を挺して庇ってくれた事に気づいた。
「…ん……」
薄っすらと目を開けた女性は少女に微笑み
「怪我…して…ない…?」
と、問いかけた。
流れる涙を拭いながら少女は頷いた。
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