4人が本棚に入れています
本棚に追加
だからといって、そこから離れることもできない。
他のだれかに見せていいものではない、そんな確信があった。
無言の時間が過ぎる。
だんだんと人の声が流れ込んで
きて、空気に現実感がなじむ。
ぼくはその女の子との間に、また違った、大きな隔たりができたのを感じた。
もとの場所に、神経が引き戻されていく。
ぼくは彼女がうつむいているのを確認し、その場を去る。
三歩目を、玄関のタイルに当てたときだった。
「待ってっ!」
震えた声が空虚な中庭に響いた。
最初のコメントを投稿しよう!