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振り返ると、涙がたまった大粒の瞳でぼくを見る女の子がいた。
立ち上がって、ワンピースの裾を揺らして、不安げにこぶしを胸に押し当てて、ぼくを見ている。
目が合う。
「……え? ぼく?」
思わず訊いてしまう。
「え、あ、うう……?」
女の子はぼくの裏返りそうだった声を聞いて、一歩後ずさる。
なぜか怖がられてるみたいだ。
けど、切り株から立ち上がった
ばかりの場所でそうしてしまうともちろん、足がぶつかる。
「あ、きゃ!」
距離もあって、ぼくは女の子に
手を貸すことができなかった。
それでも、ちいさな悲鳴が届いてすぐに駆け出した。
間にあうとは思わなかったが……止まってはいられない。
女の子がバランスを崩して、もう後ろに倒れかかっている。
(……間にあえっ!)
手を伸ばした。
届かない。
けど。
ぺたん、と女の子は、ちょうど
切り株に座りこんだ。
桜のほうが、女の子を吸いよせたみたいな光景だった。
なんだか微笑ましい。
ぼくは息をつき、足を緩める。
女の子は、まだ目をつむったまま固まっていた。
そんな彼女を見て、なんだか急に親近感がわく。
ぼくは歩み寄っていた。
「……大丈夫?」
声をかけてみた。
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