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「え、あ、うん……」
すこし恥ずかしそうにして、胸へ手を置いて視線をさまよわせる。
「……」
なんとなく、ぼくは手を差しのべてみた。
普段のぼくなら、近くで見れば
年が同じくらいの女の子にこんなことはしない。
けど、僕の目には、彼女がずっと年下のように見えていた。
「……」
彼女の目が僕の左手をとらえて、きょとんとした顔になった。
3秒くらいそうしていて、意味に気づいたのか、顔をおもしろい
ほど赤くした。
「……」
こっちも恥ずかしかった。
しかしいまさら退くことも、ぼくにはできなかった。
かといって、むりやり彼女の手を引くようなこともできず。
「……」
彼女が下を向いた。
あれ、これなら引っ込められそうじゃね、とぼくは思った。
手を引いた。
そうした次の瞬間、彼女の華奢な手が持ち上がった。
下を向いたまま、ぼくのほうは
見ていないままに。
ぼくがなにもできずに彼女の手を見ていると、その手が宙を探り
だした。
ぼくの手を探している?
「……」
けどぼくには、自分から女の子の手を握りにいくほどの度胸はないのだった。
だから鞄からペンケースを引っ張り出して、ぼくの手があったと
思われる場所に差し出した。
「……」
ぼくはなにをやってるんだ?
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