344人が本棚に入れています
本棚に追加
枕元に置いていた携帯電話から、メール受信のメロディが流れてきた。何十年も前に死んだ洋楽歌手のアップテンポな曲が、眠り足りない私にこれでもかと耳に流し込んでくる。
頭をボリボリ掻きながら、手探りで携帯を取って開いた。ディスプレイには、日頃から見慣れた名前が映し出されている。
Frome:マヤマさん
Subject:出勤。
依頼。20分以内に事務所。
遅れたら減給。
普段の口の悪さから想像できないほどメールは淡々としているが、横暴な内容だと思う。
私はぱちりと携帯を閉じて、息を吐いてベッドから起き上がった。脱ぎ捨てていた下着と服を拾い、素裸からいつもの格好になり始めている時だ。
「・・・仕事か?」
私の隣りで眠っていたマサヤが、目を覚ました。顔立ちは整っているのに実年齢の26歳より老けて見え、それが寝起きになると尚更老け顔になる。そんな彼を見て、酷い女と思うが笑いそうになるが、我慢し頷いてみせた。
「そう。20分以内に」
「・・・相変わらず時間にはうるさいほうだな、あの人は」
最初のコメントを投稿しよう!