始まりの時刻まで。

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 枕元に置いていた携帯電話から、メール受信のメロディが流れてきた。何十年も前に死んだ洋楽歌手のアップテンポな曲が、眠り足りない私にこれでもかと耳に流し込んでくる。  頭をボリボリ掻きながら、手探りで携帯を取って開いた。ディスプレイには、日頃から見慣れた名前が映し出されている。  Frome:マヤマさん  Subject:出勤。  依頼。20分以内に事務所。  遅れたら減給。  普段の口の悪さから想像できないほどメールは淡々としているが、横暴な内容だと思う。  私はぱちりと携帯を閉じて、息を吐いてベッドから起き上がった。脱ぎ捨てていた下着と服を拾い、素裸からいつもの格好になり始めている時だ。 「・・・仕事か?」  私の隣りで眠っていたマサヤが、目を覚ました。顔立ちは整っているのに実年齢の26歳より老けて見え、それが寝起きになると尚更老け顔になる。そんな彼を見て、酷い女と思うが笑いそうになるが、我慢し頷いてみせた。 「そう。20分以内に」 「・・・相変わらず時間にはうるさいほうだな、あの人は」  
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