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「じゃあ、次は、いよいよ付き合うの段にいきますか?」さと子さんが赤ちゃんをあやしながら微笑んだ。
「やっぱなんかよくわかんないんだけど…これから付き合う相手に愛を教えてもらえばいいんじゃないの?」
俺の言葉に、女性陣全員が苦笑いする。なぜだ?みんなもう理解してるのか?
「んとね…確かにわかりにくいけど、それだと手段と目的が逆っていうか…。本物の相手なのかも見極めにくいし。この子かな?っと思って付き合った相手が、初めての愛を教えてくれる相手っていう奇跡は、あんまりないものよ。やっぱり、愛がどういうものかを知っていて、自分が存在を愛しあえそうな相手を見極め、今から説明するモテテクニックで、なんとか自分に引き寄せ、絆を築いていくのがいいと思う。何せもう、若くないから。」
…若くない。確かに。そうか、見極めミスをしてる暇がないのか。
「極論を言っちゃえば、私と町田くんが愛を教えあうもの同士でもいいのよ。」
「はい?」
何言ってんだ人妻がって…赤くなるな俺!
「さっきも言ったじゃない、友情でもいいと。相手が結婚してても子供がいても、出来れば異性がいいけど、同性でもいい。出来れば愛がいいけど、友情でもいい。とにかく相手の存在を自分と同じかそれ以上に、大切に思う経験ね。」
「自分以上に相手を想うことなんて、確かにないかも。」理論派夢子さんが、過去の自分を思い返すように考え込む。
「町田くんが大切で大切で、町田くんが苦しいと私も苦しくて、嬉しいと私も嬉しい。生まれてきてくれてありがとう。」
さと子さんの言葉に三人とも固まった。
…なんか…さと子さんは仮に言ってるんだろうけど、胸にじんわりしたものが込みあがる感じがする。生まれてきてくれてありがとう、なんてさ。親にも言われたことないし。
「どうどう?」
のぞみさんの言葉に、俺は鈍く頷いた。
「…なんかちょっと意味分かったかも。」
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