名古屋の母

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 「すごいね二人とも。私は全然料理にたずさわってないよ。調理師学校出たのにね。」  意気消沈気味なのは、高崎のぞみ。先生の情報では、大学の英文科に通いだしたらしい。教育免許を取るために。だから今は学生なわけだ、また。ロングヘアーでスレンダー、ネイルやらネックレスやら色々している。きゃぴきゃぴ女子大生って感じだ。  20畳ほどのリビングを、長男君が駆け回っている。赤ちゃんはベビーベッドで眠っている。こんなにやかましくても眠れるのは、一生のうちで今だけだろう。  「可愛いよねぇ…いいなぁさと子は二人も子供がいて。」のぞみさんがベビーベッドに寄り添う。  「旦那さんとは職場で会ったんだっけ?」夢子さんがキッチンでお菓子の準備をしているさと子さんを見た。  「うーん、実はね。この子供たちは奇跡の結晶なのよ。」  俺たちは三人とも押し黙った。意味が分からない。  「ケータイで、ネットやメールでお見合いできるっていう、お手軽なやつをやってて…まぁ…安全な出会い系みたいな。何人かと会ってみてだめで、疲れて、もういいやって頃に、今の主人から『もう恋人は出来ちゃったかな?よければメール下さい』みたいな文で、プロフィールが送られてきたんだ。その段階で削除しちゃうと、もう二度と会えないっていうシステム。年が6つ上で38だったし、削除しようかって親指が動いたんだけど…なぜか削除せず…会ってみて今に至るわけ。」  「ええ?何それ?初めて聞いたよ?」女性陣が驚きの声を上げる。俺だって驚いた。  「あの時さ、もしもこの親指が削除決定ボタンを押してたら、ここにこの子たちはいないんだよ。それってすごく奇跡だと思わない?」    俺たちは無言になって子供たちを見つめた。
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