女害

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 窓から差し込む柔らかな光が、朝である事を私に知らせてくれた。  上半身だけを起こし、私は伸びをする。体の筋肉が程よく引き伸ばされる感覚に、頭が一気に冴え渡る。  それが一日の始まり。  ベッドからゆっくりと降り立つ。いつになく家具の少ない――綺麗に片付いた自室を満足げに見渡し、仄かな芳香を楽しむ。  成績優秀で品行方正。それでいて容姿端麗な――要するに才色兼備な私に相応しい部屋と言えよう。  その部屋を後にした私は洗面所へと向かう。そこで洗顔と歯磨きを、そのあと食卓で朝食を摂り、用を済ませる。  身体に馴れ親しんだ工程とも言える生活リズムを今日も私は難なく熟(こな)してみせた。  「行ってきます」という常套句(じょうとうく)を発し、私は家を出る。  春うらら。五行説的に言えば青春。その暖かな日差しに、自然、唇の結びが緩まる。  いつも通りの日常。  その季節特有の恵みである淡い紅色の桜――それが舞い散る煌(きら)びやかな川沿いの道を、ゆっくりとした足取りで歩きながら学び場へと向かう。
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