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「あの人、大丈夫かな?」
美緒が指差す先には、三十代手前のどこか哀愁漂う男性が屋上の手摺りに肘をかけていた。 後ろ姿だけで判断したのだが。 その姿が何ともリストラされて絶望のドン底にいるような感じで、今にも自殺でも図るのではないかという危うさがあった。美緒もなおも、一応、血の通った人間なので、自殺しようとする人がいたら全力で止める。
二人は、顔を見合わせ、うなずくとその男性の後ろに回った。
が、回ったはいいが、なんと声をかければいいのかわからない二人。仕方ないから、普通に話し掛けることにした。
まず、なおが口を開く。
「ゆ、夕陽、綺麗ですね」
男性は、ピクリと体を動かし、驚いたようになおを見る。なおは、もっと、驚いた。後ろ姿は推定三十代手前なのに、前で見ると、なおと同い年、もしくは少し上のだが、どこか苦労が漂う男子だった。
「あれ?おねーちゃんたち、どないしたん?俺ともしや、知り合い?なわけ、あるか、こんな美人なおねーちゃんたちと知り合いなわけないやろう」
一人突っ込み、一人ボケ。男声にはめずらしいちょっと高めの声だった。関西独特のイントネーションがあるのでたぶん、そちら出身なんだろう。
美緒は、心配なのか言った。
「何があったか知りませんが、自殺はダメですよ?世の中、捨てたものじゃありません」
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