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「タロー、だって、このオレが自殺するとか言うんやで!?そないアホなことがあるわけないやろう!!」
髪をブラウンに染め、顔は細長く肌が白いタローさん。美緒の顔が薄いピンクに染まったのをなおは見逃さなかった。
「君はバカ?そんなところで、物思いなんかに更けていたらそう見えるのは仕方ないんじゃないかい?」
呆れたような口調を崩さず、正論をぶつける『タロー』に、ぐうの音も出ない柊さん。なおは、漫才のようなやりとりに割り込むことに対して罪悪感を抱きながら声を掛ける。二人は、振り向いた。
「あのー、私たちの勘違いでした。すみません……」
ペコリ、と二人で頭を下げる。
と、その時、アイスクリーム屋の方から可愛い子供の声がした。タローさんは、呆れた表情をいっぺんに変え、営業用のスマイルをしながら、そちらへ走っていった。
「おい!可愛い女子大生の話、終わってないやろう!!」
可愛い……?!!
お世辞と解っていても嬉しかったなお。美緒はまだ、頬を桃色に染めたままアイスクリーム屋の方にいるタローさんを見ている。
「いや……あ、あの!し、柊さんは普段、何してる人なんですか?」
このカオスな雰囲気をどうにかしたくて、なおはまた言葉を発する。柊は、にやりと頬を緩めると、答えた。
「昼間はしがない学生やけど、夜になったら、ちゃうよ。とある劇場で大爆笑を引き起こす、天才的なお笑い芸人なんや!」
鼻息荒く語る柊。その姿は、夢を持たずにフラフラとしている学生よりも、格好良く凛々しいと思え、好感を覚えた。
「すごいですね……。柊さんは芸人を目指してるんですか」
並みなコメントしか言えない自分の語彙に顔に出さない程度に落胆する。が、柊はそんなことは気にしていないらしく、うんうんと頷いていた。
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