序章

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タローに千円札を渡すと、彼は釣り銭を取りに行くため、またソフトクリーム屋のところへ行った。 美緒は、美味しそうにソフトクリームを食べている。なおは、時折、夕焼けを見ながら食べていた。 「夕焼けって悲しい色やね」 なんだか聞いたことのある台詞に二人は、顔を上げる。柊はどこか淋しそうな顔をしながら、言葉を継いだ。 「全てを燃やし尽くす火の色に似てると思うんや、それで、いつか、あの火がオレらの町を燃やすんやろうな」 高めでもない、低めでもない、中間辺りで何か人をホッとさせるような声。なおは、その声が好きだった。隣で聞いていた親友は、あっけらかんとした口調で彼に言葉を返す。 「燃やされたら、また、作り直しましょうよ。ここに人がいるかぎり、この町は何度だって蘇ります。戦争が良い例です。私たち日本はアメリカに負けて、一時は国を壊され燃やされかけました。でも、今はこうして、こんなふうにしゃべったり、ソフトクリームを食べたりすることができる」 言葉を一旦区切り、溶けかかったソフトクリームをなおたちに見せる。柊はクスッと笑うと、美緒が言いたかったであろう言葉を吐いた。 「日本は作り直されたんやな、昔の日本人たちの手によって。人間は、強い。知能や行動があったり、できたりするからな。何度壊されても、また、生き残った人間で作り直されるんやな、新しい世界が」 なおだけ置いてきぼりにされた気分だった。というか、面白くなかった。単純に。 それが表情に出ていたのか、小銭を握り締めていたタローに、心配された。 「どうしたの?そんなつまらなそうな顔して、まさか、柊がまたくだらないギャグでも言ったんじゃ……」 「そんなわけあるかっ!オレは世界最高なギャグしか言わへん!」 大きく出た柊。なおは、怪しそうに柊を見た。 タローは、笑いながら、言った。 「そしたら、その世界最高なギャグを見せてもらいましょうか?柊クン♪」 「お、おう!!」 さてはて、世界最高なギャグとはなんなのか? 美緒は期待したような目で柊を見つめた。 ――そんな目で彼を見るなぁ! 喉元まで出掛かったが、どうにかそれを飲み込む。
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