序章

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「………………ふ、布団が吹っ飛んだ~~~」 ――シーン。 どこかで、カラスが 「アホー、アホー、アホー、アホー」 と鳴いていた……。 「あー、お腹空いたな~」 気まずい雰囲気をぶち破るようにタローが言葉を発した。木枯らしまで吹きそうだったこの雰囲気に救いの神が降りたようだ。 「そ、そうですねー。あ、ゆ、夕飯、何にしようかな……?」 わざとらしく合わせる美緒。なおは、困ったような顔をして、柊を見た。彼は、恥ずかしそうにうつむいている。 「あ、あの!えっと……世界共通のギャグですよね!!それ!」 無駄なフォローと知りながら、なおは一生懸命言葉を重ねた。 「わ、私もたまにやりますもん!みかんがみっかんない!とか、ソースは最高!ソーッスね!とか!」 クスクス。へたくそな親父ギャグを連発するなおに柊はおかしくなって、笑った。なおは、柊が笑ってくれたことが嬉しくて、顔が綻んだ。 美緒とタローは、なおの必死なフォローが可愛くて微笑ましく思っている。 「お嬢ちゃん、ありがとう。そんなこと言ってくれたのお嬢ちゃんだけや。オレ、嬉しいわ」 自然と出る柊の笑顔になおは、自分が惹かれていっていることを確信した。卓哉の笑顔にこんな気持ちになるわけじゃなかったから……。 ただ……。 もし、ここでなおが彼に惚れなければ。 もし、ここでなおと彼が出会わなければ……。 二人の運命は大きく違ったのではないだろうか……?
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