序章

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部屋に帰り、誰もいない室内に向かって声をかける。 「ただいま」 返事などない。電気をつければ、部屋はピンクと白で飾られた女の子らしいものとなっている。 それから、ルームウェアに着替え、テレビをつけた。 よく解らないバラエティ番組に若手のお笑い芸人がゲラゲラと笑いながら女優や俳優に突っ込んでいる。 なおは、それを流しながら、今日会った〝彼〟のことを考える。 関西出身で、カッコいいというわけではないが、どこか人に安心感を与えるような気がする。 (柊……さんか……) なぜか、頭から離れない彼の言葉、彼の声、彼の笑顔……。 好き……なのか? 自分は。 会ったばかりの男を? いや、違う。 少し特殊な状況で出会ったから頭に残ってしまっているだけ、 きっと、明日になったら、忘れてるはず……。 なおは自身をそう納得させると、テレビを消して、シャワーを浴びに行った。 なおがシャワーを浴びにいった数分後、彼女のスマホがブルブルと震える。 着信は柊。 数十秒、鳴り続けた後、留守番電話につながる。 「あんなー、関係ないかもしれへんけど、俺、彼女にふられたわ。……って、なんでこないなこと会ったばかりのなおちゃんに伝えてんやろう。バカみ――」 言い終える前に、発信音が鳴り、留守電が終了する。 それぞれの思いを抱えた夜は、秋の夜長のように長いのか、それとも、夏のように短いのか……? どちらだろう?
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