41人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
冷静さを保とうと思いながらも、うれしさを隠し切れず、少し華やかな声になる。
「ホンマ、ホンマ。こんなこと言うと軽い男に思われるかもしれへんけど、オレ、なおちゃんの声好きやで」
含み笑いの彼の言葉になおは少したじろいだ。
お世辞だとは知りながら、嬉しさを感じる自分に苦笑いをしてしまう。
「あ、ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです」
「お世辞やないで? 」
何も言っていないはずなのに、柊はなおの心を見透かすように彼は言葉を発した。
「オレ、もしかしたら、なおちゃんに一目惚れ、したかもしれへん」
一瞬で時が止まった。なおは、何を言われたのか理解できず、ふぇ? と変な言葉を出してしまう。
すると、柊は気恥ずかしくなったのか、やっぱり、ええわ、と笑い、また、メールする、と言って電話を切った。
ツー、ツー、ツー。無機質な発信音を聞きながら柊の言葉を反芻してみた。
「オレ、もしかしたら、なおちゃんに一目惚れ、したかもしれへん」
………からかわれた、のだろうか? 柊はその手の冗談が好きだったのだろう。だから、なおをからかってみた。
そうに違いない。 そうに決まっている。
真面目に受け取ったらダメなのだ。
なおは、そう納得すると大学に行く準備をすることにする。
最初のコメントを投稿しよう!