序章

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冷静さを保とうと思いながらも、うれしさを隠し切れず、少し華やかな声になる。 「ホンマ、ホンマ。こんなこと言うと軽い男に思われるかもしれへんけど、オレ、なおちゃんの声好きやで」 含み笑いの彼の言葉になおは少したじろいだ。 お世辞だとは知りながら、嬉しさを感じる自分に苦笑いをしてしまう。 「あ、ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです」 「お世辞やないで? 」 何も言っていないはずなのに、柊はなおの心を見透かすように彼は言葉を発した。 「オレ、もしかしたら、なおちゃんに一目惚れ、したかもしれへん」 一瞬で時が止まった。なおは、何を言われたのか理解できず、ふぇ? と変な言葉を出してしまう。 すると、柊は気恥ずかしくなったのか、やっぱり、ええわ、と笑い、また、メールする、と言って電話を切った。 ツー、ツー、ツー。無機質な発信音を聞きながら柊の言葉を反芻してみた。 「オレ、もしかしたら、なおちゃんに一目惚れ、したかもしれへん」 ………からかわれた、のだろうか? 柊はその手の冗談が好きだったのだろう。だから、なおをからかってみた。 そうに違いない。 そうに決まっている。 真面目に受け取ったらダメなのだ。 なおは、そう納得すると大学に行く準備をすることにする。
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