41人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
準備をしながら、想うのは蔭山と柊の顔。
蔭山は、痩せていて真面目そうな銀縁メガネの優男。 柊は、浅黒い肌に裸眼で、ガテン系の男性。
両極端な二人だと思いながら、中身のつまったバッグを肩に背負い、誰もいない部屋に向かって、小さな声で行ってきます、と呟き部屋を出る。
大学への通学方法は、徒歩。
自転車に乗れないなおは、長い上り坂をせっせと上がっている。
春らしい暖かい風がなおの頬を撫でた。
――あったかいなぁ。この季節が一番、好き。
春風の柔らかな匂いに頬を緩ませながらゆっくりと大学への道を歩いていった。
大学に到着すると。
美緒が話しかけてきた。
「おはよ! なお! 」
ハイテンションな美緒になおも明るく返す。
暖かい陽射しが教室に入り、ぽかぽかな陽気をここでも感じられる。
「昨日、あれから、柊さんから連絡来たの? 」
興味津々な美緒になおは昨晩の出来事を伝える。
美緒はキラキラと目を輝かせながら、うんうん!と聞いていた。
最後は乙女チックな声を洩らしながら机に突っ伏す。
「いーなー、なおは。きっと、両思いだよ! 」
その言葉で慌ててなおはプルプルと首を横にふる。
でも、妄想全開に入ってる美緒は浸りきっていてこちらを見ていない。
「あ、あと、美緒に聞きたいことあるんだけど……」
なおの言葉に、美緒はピキッと起き上がると。
「なに? ファッションのこと? なら、なおに似合う服が……」
いやいや、なおは首をまた横に振りながら、蔭山から聞いた話をした。
すると、美緒は途端に顔を顰める。
「塚田かぁ。あー、んー」
唸る美緒になおは不安げに訊ねた。
「どんな人なの? 文芸部の人、よく知らないんだ」
なおの言葉に美緒渋い顔をしながら言葉を告いだ。
「ボンボンのチャラ男。金さえあれば何でも出来ると思ってる最低な男。いやー、たしかに、あいつのタイプかもしれないなぁ、なお」
その言葉とともに美緒は視線を外す。
次に注がれた視線はなおの胸元。
ピンクのTシャツの襟から覗かれるたわわな膨らみは、男子生徒の目を引くだろう。
なおは、その露骨な視線に慌てて手で胸元を隠す。
いくら、親友で同性であってもジロジロ見られるのは恥ずかしい。
「まぁ、行かないほうがいいんじゃない? 行けばあんた、食われる気がする」
〝食われる〟の一言になおは顔を赤く染めた。
最初のコメントを投稿しよう!