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美緒は、その人物を睨みつける。言うまでもない。蔭山だった。
「塚田が待ってるから、来いよ」
美緒越しに声をかけられるなお。美緒は反射的に言い返した。
「あんたとの約束守る義理なんてないわよ! 」
美緒の言葉に蔭山は不機嫌そうに眉を顰める。なおは、良く分からずに不安そうな顔をしていた。
「それは、美緒が決めることじゃないだろ、なおが行くか行かないか決めるべきだ」
美緒は、なおを背に隠しながら叫んだ。
「は? ふざけんじゃないわよ! 」
美緒の怒鳴り声に、蔭山はギョッとしたように体を仰け反らせた。
「なお、行くよ! 」
無理矢理、美緒はなおの腕を引き教室を出る。なおは、一瞬だけ蔭山の顔を見た。酷く寂しそうな顔で……。
「ねぇ、美緒……」
「なに? 」
廊下の途中、なおは、美緒に声をかけた。美緒は立ち止まりなおの顔を見る。
「塚田くん。何の用なんだろう」
その疑問に美緒はため息をついた。純粋すぎるなお。不安になる。
「気にする必要ないよ、どうせ、ロクデモナイ用事でしょ」
美緒はあっさりと答え、なおの手を握る。
「もし、塚田のとこに行くなら私と平岡先生
も連れていくよ」
平岡先生と言われるガタイのいい教授。なおはその先生も一緒なら、大丈夫かと思った。
「うん、相談しに行こうか」
なおは、安堵したような表情になり、頷いた。蔭山の表情に陰りが宿る。
「平岡には聞かれたくないんだよ、なぁ」
美緒はそんな蔭山の言葉を無視し、なおを連れ教員室へ足を運ぶ。
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