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「うそじゃ……だよね……?」
努めて明るく言おうと振舞うなお。
だが、そんなこともできず、語尾が暗く沈んでしまう。陰山はその姿を見て軽いため息。
そして、なおの胸を見ながら言った。
「実は、オレ、小さい胸の子が好きだったんだ。ずっと、なおに遠慮して言えなかった。はじめはすぐに別れるつもりだったんだ。でも、友達にお前の彼女、巨乳だ、とか、羨ましいとか言われるたびにオレ、お前のこと普通に自慢してた。てか、オレはお前のことただの巨乳の彼女でそれをステータスにしてたんだ。でも、そんなんでいいのかって悩んでたら、お前と仲の良い詩織ちゃんと仲良くなってったんだ」
なおは、その名前を聞いたときピクリと、眉が動くのを感じた。二人の間で、詩織ちゃんと呼ばれる子は一人しかいない。それは、漫画研究倶楽部の後輩である倉川詩織のことだ。大人しく自分から何かをやりたいという積極的な気持ちはなく、吹けば跳ぶようなそんなタイプだった。
染めていないセミロングの髪に色白い肌、目が人形のようにパッチリとしていて、深窓の令嬢といったそんな女子だった。彼女は、あまり胸がないがそこも変に色っぽくなくていい、という評価があった。
「それで?」
自分の反応を窺うようにしている陰山に、なおは続きをうながす。
自分の容姿が嫌いだ、ということは誰にも知られていない秘密だった。だから、なおは人知れず膝に置いた手で自分の太ももを抓った。
やっぱり、自分が嫌いだ。
周囲の視線は、ちらほらとこちらに向けられている。
もう、見たかったら見ればいい。どんな噂になっても良いや。 なおは、そんな風に開き直りながら陰山を見た。彼は周囲の好奇の視線に耐え切れるのか。
「そ、それで、彼女と接してるうちに、その……気づいたら目で追ってて……お前と一緒にいても、あの子が気になってた。休みの日、映画に誘えば素直に喜んで、一緒についてきてくれたし、手つなごうとしたら、恥ずかしがって拒否ったし、でも、そんな仕草が可愛かったり……」
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