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洟を啜りながら、涙を流し、ただ、ただ、泣き続け、気がついたら、ポケットティッシュがもう無くなっていた。 それでも、まだ、泣けてくる。 だって、大好きだった彼が。 自分でも驚くくらいに大好きだった。 それなのに……。
【ごめん、オレ、本当は小さい胸の子が……】
その言葉に、また涙が溢れてくる。やっぱり、胸、見るんだろうな、みんな。 見るところはみんな一緒、どうせ、一緒。 そう感じると、やっぱり、赦せない。でも、男性の本能だから仕方ないのか?
「本当に嫌になっちゃうな……」
そう言いながら、ボロボロになった大量のティッシュをズボンのポケットにむりやり押し込んで、まだ出てくる涙を袖で乱暴に拭う。 泣いてたってもう、卓君は自分に振り向かない。ならば、もう、前を、向くしかない。
そう思いながらもなおは、桜の木の下で立ち止まる。用務員の手で刈り揃えられた芝生に膝をつき、唇を痛いくらいに噛んだ。 笑え、私、また、馬鹿みたいに。 大丈夫、独りなんかじゃない、こんな恋、いつか、いつか……笑い話になるんだから、そんなこともあったんだよ、馬鹿だったね、と未来の旦那様と一緒に笑うんだから……、だから……だから……。
お願いだから、前を向かせて。 下ばかり向いたっていいことないんだから。 自分にそう言い聞かせ、足に力を入れて、空を見上げる。空は、どんなになおや誰かが傷ついたとしてもその顔色は変わることはなく、ゆったりと時を刻み込んでいた。 ああ、どうして、こんなに平和なのだろうか?この国は。
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