序章

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時間は進み、放課後。 今日はなおのサークルもなく、美緒の茶道部もない。 だから、二人で駅前のケーキ屋に行くのには絶好のチャンスだった。二人は、大学を出ると、陰山の悪口や違う男の話、詩織の悪口とか言いまくった。 でも、実際に詩織に逢えばきっと、笑顔で接するのだろう。大人の対応、というやつだ。 それに、詩織だって戸惑っているのではないか。彼の口ぶりからはすでに付き合ってるという話は聞いていない。多分、付き合っていたとしたしたらもっと大騒ぎするだろう。 「にしてもさぁ、陰山もまじありえないよね」 ケーキ屋の上のテラスでティラミスをつつきながら、美緒が怒ったように言う。こういうときだけ、感情が露わになるのだ。 なおは、力強く頷きながら、イチゴの乗った生クリームたっぷりのショートケーキをフォークで一口サイズに切って口に運ぶ。名前もわからないクラシックが静かに流れていて、優雅なティータイムといった感じになっていた。 「うん、でも、気づかなかったのってないのかな?」 甘いクリームを口の中で味わいながら、グラスに入ったストレートティーを啜る。美緒は、短い髪をクルクルと自分の指に巻きながら、なお以上に怒る。 「そんなことないよ!! 大体、別れる理由が最低でしょう!てか、詩織も可哀想だよね、なおと仲良くなれて大喜びしてたのに、急にこんなことで気まずくなるなんてさ。まぁ、私たちだから良かったよ、特になおはそんなの気にしないだろうし」 そういって、なおを見る。 なおは、グラスを置くと頷いた。 自分の好きな人が誰を好きでいようと関係ないと思う。自分は選ばれなかった。ただ、それだけなのだ。 強くならなきゃ、そう思いながら、二個目のケーキを口に運ぶ。ゆったりとした時間、美緒は怒りながら、でも、少しずつ話題を転換させていく。 今月のテストや自分の彼氏の悪口、あとはここのケーキの味。 まぁまぁ、だといいながら、パクパクと食べている。 なおは、そんな親友の話題の豊富さに目が回りながらも、安堵していた。 これ以上、悲しみが増えなくて。
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