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その笑顔を見て、美緒はホッとしたような笑みを見せ、大きくうなずき、ブレスレットを二つ買った。なおは、お金を出そうとしたが、美緒がそれを断り、失恋記念だとめでたくもないことを言ってなおを笑わせた。
「そろそろ、屋上、行こうか?夕陽も綺麗だろうし」
モノクロのスマホで時間を確認したなおが言う。美緒はよほどブレスレットが気に入ったのか、オレンジ色の照明に当てている。
「そうだね。そろそろ、行こうか」
照明からブレスレットを離し、彼女がニコニコとしながら言った。
そして、なおと美緒は、屋上に通じるエレベーターまで歩いて乗った。
「今日は良い天気だから夕陽、綺麗だろうね」
無邪気にはしゃぐ、美緒になおは軽くうなずく。
「うん。アイス、食べながら、夕陽、見るのってお洒落だよね!」
傍から見れば、きっと、失恋など関係ない普通の女子大生に見えるだろう。それくらい、彼女の振る舞いは不自然ではなかった。
エレベーターが屋上まで昇り、無機質な白い扉が音をたてて開く。
夕方の初夏の生ぬるい風が二人の頬を撫でた。
冷房の冷たさに慣れていた二人はその生ぬるい風がくすぐったく感じた。
「あ、ソフトクリーム屋さん!」
子供のような声でなおが指差す。だが、美緒の目には違うものが映っていた。
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