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「…行かないと…早く…」
大理石の広間で座り込んでいた少年は、剣を支えにゆっくりと立ち上がった。
長剣を両手で掴んだ事で左手に持っていた短剣を落としてしまったが、少年にとってはこの際どうでもよかった。
「アイツが…まだ戦ってるんだ」
この場を預かり、先に行かせた親友の顔が脳裏に浮かぶ。
時折、城を揺るがす衝撃が上から響いてくる。
「待ってろ…今…行く…」
壁に寄りかかりながら、身体を引きずるようにして少年は前へと進む。
部屋の最奥に位置する、最上階に続く階段を目指して。
少年の寄りかかる壁には、べったりと血の染みがついている。
壁だけではない。彼の足元にも血溜まりができていた。
それは誰が見ても、致死量だと分かる程。
「……っ」
身体がぐらつき、少年は壁に身を預けてずるずると崩れ落ちた。
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