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「まず私たちがしなければいけないのはどうやってアルマ姫を殺すか」
「違うだろう。どうやってアルマの中の戦意をなくすか、だ。
アルマに育った王国を破壊してほしくないからね」
「お優しいのですね。アルマ姫には」
白狐はスネが入ったように言う。
と――アルマが動いた。
滑るように虚空を移動し、右手を前に――イザナへと向ける。
そして呪文。
「私の腕に宿りし、【虚無】」
アルマの腕に闇色の鈴が出現する。
りん……と鈴が涼やかに鳴った。
瞬間、見えない力が空間を引き裂き、衝撃音――というべき波が広がった。
「……火獅子の鬣(たてがみ)……で十分ですわね」
白狐の前に火獅子が浮かび上がり、鬣の回転させる。
小さな太陽を思わせるそれは迫った波を弾き、散らす。
完全に衝撃を緩和できなかった白狐はぐるぐる回り吹き飛んだ。
そしてぼやく。
「マスターの人でなし!
私を見捨てて自分だけ助かるなんて」
「人聞きの悪いことを」
イザナは白狐を睨む。
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