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大量に吐き出された血は地面に広がる。
あまり時間がない――彼女にはそう思えた。
少年の命は少しずつ失われている。
彼女が【失敗】したからだ――作戦を――その行動を。
少年を抱き締める。
少年の体は冷たく、まるて氷に触れているようだ。
「しっかりしてください! イザナさん!」
彼女が必死に叫んでも少年は答えない。
薄く開ける目に生気はなく、もうすぐ――
「私はアナタをこんなところで失いたくないのに!」
彼女から渦巻く魔力がたちのぼり、中天に紅いリンクを出現させた。
「アナタたちがいるから彼は――」
彼女は呪文は唱えていない。
しかし紅いリンクから大量の炎の矢が解き放たれ、敵という敵を貫いた。
危うく仲間も餌食になりそうになったが彼女は構わずに頭の中で想像する。
敵対するヤツらが恐怖を覚えるくらいの存在を。
――一人の人間。
年齢は三十代前の、背中に【七つ】の羽を生やした青年。
彼女と、そして彼女の仲間を敵対する連中は動きを止め――
みな驚愕して震えだした。
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