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「な、なぜ……【あの方】が……!?」
バケモノは声をあげる。
バケモノたちの間で衝撃が走った。
バケモノたちが知っている人物――否、存在だ。
「滅びなさい!自分たちの【主人】の手によって」
それがバケモノたちが聞いた最期の言葉だった。
業火の炎があたり一面を焼き、バケモノたちを体内から燃やしていく。
血を発火させたバケモノたちは原形も残さずに消滅し――
彼女の仲間――家族は慌てて避け、あるいは防御し、何とか【それ】の攻撃に耐えた。
「はぁはぁ……くっ……!」
肩で大きく息をした彼女は腕の中の少年を見る。
わずかに命を繋ぎ止めている少年の姿に胸が張り裂けそうになる。
「私がもう少ししっかりしていれば……この子を」
そう口にした彼女は驚き目を見開く。
「これは……?」
彼女はハッとして頭上を仰ぎ見た。
この世界には十二個、月が存在している。
しかしその月が【二つ】以上、同時に姿を現せることはない。
長い歴史でそういった前例はなかった――十二個すべての満月が現れることなどは。
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