序章

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夕方 彩里は、親友の真佑実(まゆみ)と出掛けていた。 「わ、もう5時だ。帰らなきゃ」 「えぇ、もう帰るの?」 真佑実は残念そうにした。 「ごめん、まゆちゃん。母さんに言われてるの。」 「うん、なら仕方ないね。じゃあね、さーちゃん」 「また明日ね。まゆちゃん」 真佑実とわかれた彩里は、家路に急いでいた。 「急がなきゃ。母さんに叱られる」 「ただいま~!」 何時もあるはずの返事がなかった。 試しに居間へ行ってみると、まだ、奈留は友人と話していた。 「あの店のケーキが美味しいのよ。今度彩里ちゃんと行ってみたら?」 「嫌よ。あの子は邪魔なだけだもの。なんであの子を譲らなかったのかしら。本当に疲れるわ。」 「なにいってるの。あの子程できた子はいないわ。容姿も完璧、勉強もできて、スポーツ万能。自慢の娘じゃない。うちの夏希(なつき)も見習ってほしいわ。」 「だから疲れるのよ。夏希君の方が、かわいいじゃない。勉強が少しできないほうが可愛いげがあるわよ。」 「そうかしらねぇ?」 そこまで聞いて、彩里は愕然とした。 私は、要らない子…?母さんは私のことが鬱陶しかったの…?
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