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女の名前は真由花という。
最近陽介が頻繁に出入りする、とある事務所の事務員的な女だった。
初め見たとき、清純な印象を受けたがそれはすぐに変わった。
彼女の方から陽介を誘ってきたのだ。
見た目は10代に見えた彼女に、彼がそう言うと、はにかみながら25才だと言った。
ありえない、と、更に笑ってみせた。
『飲みにでも行きません?』という、真由花の誘いに乗ったその晩、陽介は彼女の部屋で彼女と寝た。
真由花は、ベットでの行為を終えるとよく言っていた。
『まさか、あたしを相手にしてくれるとは思わなかった』と。
『なんで?そんな美人じゃ、男なんかよりどりみどりじゃね?』
『そんなことないよ』
『なんで?』
『男はね、大概あたしから逃げてくの』
『?』
陽介には彼女の言葉の意味が、まるで分かっていなかった。
だから彼女との関係は続いた。
真由花の誘いに乗ったこと。
彼女と一線を越えたこと。
それが、磯貝陽介の最大の過ちだったということに、彼はまだ気付いていなかった。
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