第1話 平等な社会

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僕は気づいた。 いつの間にかこの国から、個性というものが失われていることに。 才能、人格、性格、容姿…… どれをとっても皆同じ。 因みに25歳以上の独身者は、男女を問わず存在しない。 25歳になると、付き合っている人がいるならその人と結婚し、いないならくじ引きで相手を決める。 これだけ平等なら家の造り、調達品もまた然り。 とにかく何から何まで全てが平等なのだ。 でも僕はわかってしまった。 この国で唯一平等でない存在のことを。 この国の最高権力者で、今では独裁者となった大統領だ。 彼は容姿も人格も、そして地位も違う。 そしてこのことを多くの人に知ってもらうために、街頭でビラを撒いた。 しかし、ビラが残り数枚になったとき、黒い制服を着た男たちが近づいてきた。 彼らは僕をいきなり拘束して、有無を言わさず警察車両に乗せられた。 行先はわかっている。 強制収容所だ。 そこには反体制派の人たちが収容され、世間から一生隔離されてしまう。 まったく、僕も愚か者じゃないか。 こんな独裁者を、大統領の座に就けた僕たち有権者は実に無能者だ。 自嘲する僕を乗せた車は、ひたすら目的地へ向かっている。 --fin--
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