第2話 船賃

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「いい眺めだ」 俺は歩いて約20分かけ、飛び降りるに十分な高さのあるビルの屋上に来た。 見渡す限り高層ビルが立ち並び、見下ろすと豆のような車が走り、もはや小さな点としか思えないような人が忙しなく歩いている。 こうして見ると、人がいかに矮小な生き物だって思い知らされる。 しばらく感慨に耽り、そして転落防止のフェンスを越えてきれいに足を揃える。 そして重心を前に移した。 体が重力に導かれて、地面へ急降下を始める。 地面に接触するまで僅か数秒の間、物心ついたときから最近までの記憶が脳内を駆け巡る。 これが走馬灯というやつか。 それは何かが潰れる音が合図となって終幕を迎えた。
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