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「どうして帰りたくないの?」
少女よりも随分と低い声だ。
返事が返って来るとは思っていなかったのだろう。
少女は頭を勢い良く上げると、声のした左側とは反対に飛び退いた。
「わっ!」
勢い余って池に滑り落ちる。
「あー……。」
声の主はそれをどうすることも出来ずに見送った。
伸ばしかけた手を引っ込め、池を覗きこむ。
「大丈夫かな?」
「大丈夫に見える!?」
食って掛かる少女の声にほっと息を吐くのが聞こえる。
「うん。元気そうで良かった。」
少女から見上げる顔は表情さえ分からない。
背格好と声から若い男のようだった。
差し出された手を少女は握ることなく、滑り落ちた低い傾斜をよじ登る。
「あれ? 警戒されてる?」
「当たり前。」
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