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「ついてないね。」
少女の肩が見て分かる程に震えて、鞄の取手から手が離れる。
にじりにじりと足を後ろへずり下がらせる。
「逃げたら駄目だよ。」
男はそれを大股一歩で距離を詰めると、少女の上腕を握った。
「ひっ!」
恐怖のあまり、引きつったような声が漏れた。
「そんなに怖がらないで。」
「な、何なのよ! 何ぐっ。」
ようやく出た言葉も男の大きな手によって口を押さえられ途切れた。
「しっ。静かに。でも、困ったな。」
男の腕の中で暴れる少女を他所(よそ)に考え込んだ男は、何を思ったのか、少女を池に突き落とした。
「ぎゃあっ!!」
水しぶきを上げ池に再び落ちた少女は、遅れて飛び込んで来た男に、またもや口を押さえられる。
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