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「んーっ!」
「大人しくして。あと、君人間臭いから息止めてて。」
「んぐぐっ!?」
「ほら、君にも聞こえるだろう?」
男の奇妙な物言いに、少女は思わず耳をそばだてた。
ずしん、ずしんと大きな物が落ちるような音が、段々此方(こちら)へ近づいているようだ。
池にも振動は伝わり、幾重もの波紋が浮かび上がる。
「鬼が来る。」
少女が目だけで口を押さえる後ろの男を見上げると、タ日が沈んで行った方向を見ているようだった。
少女は自由になるべく、自分の口を押さえる男の手を退けようと、もがき始めた。
「ああ、もう。分からない子だな。池に沈めるよ?」
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