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少し苛立ちを含ませた言葉に、少女はびくりと震えて動きを止めた。
それでも無意識のカタカタと小さな震えは止まらない。
響く地鳴り。
今は夏である筈なのに、辺りの気温は下がっていく。
奇妙な声を上げながら、何かが近づいていた。
「ほら、息止めて。」
少女は上手く吸えない息を出来るだけ吸い込み、息を止めた。
眦(まなじり)から涙が出てくる。
大地をも踏み破るような足音が、二人の上の道を通って行く。
少女は思わず男の手を両手で握り締めていた。
池にぼんやりと禍々しく青白い鬼火が映って揺らめく。
鬼の一足は大きく、あっという間に過ぎ去った。
「行っちゃったね。」
男はそっと少女の口から手を離した。
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