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もちろんアメリカザリガニの住むあの池に蛍は居ない。
「ここは狭間の世界。君らが妖怪とか妖、もののけ、幽霊なんて呼ぶ者たちの世界だよ。此方(こちら)からしたら君の方が有り得ないんだよ? 人間が自分から此方(こっち)に来ちゃうなんて。」
「え、え? じゃあ、あんたも人間じゃないとか、言うの?」
目の前の男は、美しい緑の光に照らされ、その顔を露にしていた。
優しげな表情のどこにても居そうな青年だ。
「そうだね。僕も思念が寄り集まって出来たモノ。その点では鬼と変わらない。」
少女はあどけない顔のなかに恐怖を浮かび上がらせた。
「こいしい。いとしい。どうかこたえて。」
「え?」
まるで歌うように囁かれた言葉に少女は聞き返した。
「僕を作る想い。安心して良いよ。そんなに悪い感情から生まれたモノではないから、あんなに禍々しいモノでも無いんだ。」
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