其の参 神妙なる眼界物語

5/19
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
私がニヤリと笑って見せると、影雅は苛ついたのか、ピクッと眉を動かした。 少し私を睨み付け、苛々している影雅の顔を見るだけで面白い。 こんなにこいつの表情を変えたのは初めてだ。 「僕今とっても眠いんだよね… 早く帰ってくれないかな…」 ……帰る? 何を言っているんだこいつ…。 帰ってくれと言う事は、私は見逃されたのか? お前は自分に勝てないからとゆう慈悲でもかけたか? そうだったら許さない。 私は馬鹿にされるのが嫌いだ。 「帰る? ふざけないで 私はあんたの息の根を止めるまで帰らない…」 あれ…。 確かこれは影雅じゃなくて、別の人物に対する言葉だった気がする…。 「別に君が戦いたいなら自由にすればいいよ だけどさ ここが敵の屋敷って事、君忘れてない? 僕と戦えば、不利になるのは君だよ」 確かに、ここは影雅の言うとおりだ。 服装の問題でも不利があったが、ここで暴れて十六夜達が来れば、確実に私は消える。 退くべきか…。 「でもかっこ悪いよね ここに来て、僕を殺そうとしたのに失敗して、十六夜達を恐れて怖ず怖ずと帰るなんて… それにあの子を殺すつもりが失敗… 祢々渕に合わせる顔あんの?」 「!!」 くすくすと微笑む顔は、私を苛立たせる事しかしなかった。 失敗の連続で、しまいには怖いからとゆう理由で背を向けて帰る。 屈辱しかないその行動は、私には絶対できない。 「気が付かれないようにお前を殺せばいい事だ! それに!十六夜達が来ても私が殺す! そしたら逃げる必要なんてないからな…」 私がそう言って影雅を睨むと、影雅はさらに微笑んだ。 それに、笑いすぎたのか、お腹を抱えながら、目元に涙が見える。 私はそんなに可笑しな事を言ってはいない。 そうわかっているからか、笑われると無性に腹がたつ。 「君が十六夜達を倒す? あははは! 無理無理! それはまず満月を倒してから言いなよ!」
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!