其の参 神妙なる眼界物語

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私がニヤリと笑って見せると、影雅は苛ついたのか、ピクッと眉を動かした。 少し私を睨み付け、苛々している影雅の顔を見るだけで面白い。 こんなにこいつの表情を変えたのは初めてだ。 「僕今とっても眠いんだよね… 早く帰ってくれないかな…」 ……帰る? 何を言っているんだこいつ…。 帰ってくれと言う事は、私は見逃されたのか? お前は自分に勝てないからとゆう慈悲でもかけたか? そうだったら許さない。 私は馬鹿にされるのが嫌いだ。 「帰る? ふざけないで 私はあんたの息の根を止めるまで帰らない…」 あれ…。 確かこれは影雅じゃなくて、別の人物に対する言葉だった気がする…。 「別に君が戦いたいなら自由にすればいいよ だけどさ ここが敵の屋敷って事、君忘れてない? 僕と戦えば、不利になるのは君だよ」 確かに、ここは影雅の言うとおりだ。 服装の問題でも不利があったが、ここで暴れて十六夜達が来れば、確実に私は消える。 退くべきか…。 「でもかっこ悪いよね ここに来て、僕を殺そうとしたのに失敗して、十六夜達を恐れて怖ず怖ずと帰るなんて… それにあの子を殺すつもりが失敗… 祢々渕に合わせる顔あんの?」 「!!」 くすくすと微笑む顔は、私を苛立たせる事しかしなかった。 失敗の連続で、しまいには怖いからとゆう理由で背を向けて帰る。 屈辱しかないその行動は、私には絶対できない。 「気が付かれないようにお前を殺せばいい事だ! それに!十六夜達が来ても私が殺す! そしたら逃げる必要なんてないからな…」 私がそう言って影雅を睨むと、影雅はさらに微笑んだ。 それに、笑いすぎたのか、お腹を抱えながら、目元に涙が見える。 私はそんなに可笑しな事を言ってはいない。 そうわかっているからか、笑われると無性に腹がたつ。 「君が十六夜達を倒す? あははは! 無理無理! それはまず満月を倒してから言いなよ!」
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