其の壱 ただの虚ろな物語

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『オイ… アレハ人間ジャナイカ?』 「!!!」 ビクッと少女の体が跳ねた時、木の影からひょこっと影が現れた。 その影は木の後ろに隠れたり出たり…。 『イヤ違ウヨ 人間ハコノ山ニ近付カナイハズダモノ』 まるで2人同時に同じ言葉を喋っているように、何者かは喋っていた。 見事に男女で声が別れていて、綺麗にはもっている。 「だ…だれ?!」 『ワワワッ! アレ喋ッタヨ! ヤッパリ人間ダヨ!!』 『ソウダネ 人間ダネ 久シブリノ食ベ物ダヨ!!』 「っ―!!」 木の影に隠れていた何者かは、少女が人間だとわかった途端、勢いよく飛び出してきた。 その姿を見た途端、少女は目を見開いた。 体は人間の数倍大きく、爪や歯も獣のように鋭い。 体は真っ赤で、額には2本の角。 そして右手には血の付着した金棒が握られていた。 (しかも虎柄の褌って! 正に鬼じゃない!) そう、少女の前に現れたのは、腹を空かした2匹の鬼。 口からは透明な涎がどろどろと溢れ、瞳はもう既に手遅れとも言うように白目をむいていた。
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