其の壱 ただの虚ろな物語

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夜…。 薄暗い道を1人の少女が歩いている。 見た目から言って、17か18……。 寝間着なのか、ピンク色の長いワンピースを着ている。 今は11月。 少女の着ているワンピースは袖がないため、この季節にこの服装は相当寒いだろう。 それに少女は裸足だ。 「あー…… 何処に行こう…」 少女は星が満天の空を見上げ、口から白い息を吐いた。 どうやら行く所を決めていないらしい。 とぼとぼとゆっくり歩いている少女は、周りから見たら確実におかしいだろう。 腕や頬、足首らへんには無数の傷痕。 よく見れば、腕にはまだ生々しい傷があった。 二の腕あたりからだらだらと流れる血。 「止血する必要はないかな 直ぐ治るだろうし」 少女がそう言った瞬間、腕に付いていた血が嘘かの様に消え去った。 そして先程までは生々しかった傷も、今じゃあ数日経ったかのような傷痕に。 セミロングの黒い髪を耳の上らへんで2つに結んでいる少女は、目の前にあるベンチに座ると、髪を留めていた黒いゴムをとった。 パサッと髪が解けると、少女はため息をついた。 その焦げ茶色の瞳は、今にも泣きそうなくらいに潤んでいる。
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