其の参 神妙なる眼界物語

8/19
前へ
/89ページ
次へ
「げん…じゅつ?」 あぁ…。 言われてみればこいつは狐だ…。幻術を得意としたな。 不覚だった…。 冷静でいれば、今私はこいつの首でも持っていたのに…。 ズシュッ! 「っ…!」 私は痛みを耐えながらも、腹に刺さっている刀を無理矢理抜いた。桃色の着物は赤く染まり、血が止まりそうにない。 手で押さえても、血は遠慮なく出てくる。 このままでは…。 「逃げな…」 「!!? なに…?」 思いもよらぬ言葉が耳にはいり、私は痛みを忘れ、影雅の方に首を回した。 体は少し動かせたが、やはり痛みであまり動けない。 影雅の手にある刀は、青い炎となり消え去った。 荒い呼吸をしながらも、私は目で影雅に問い掛けた。 “何故だ” 「……君を殺すのは僕じゃない」 「…ふざけっ…!」 ゴォォォ…。 私が立ち上がろうとした瞬間、私に行くなと言うように、青い炎が行く手を遮った。 熱さを感じない炎。 だが触れられない。 「これは情ではないよ… ただ、君はもう満と言う逃れられない檻に入ってしまった そこからすくい上げる事は、僕には不可能だ…」 「ど…どうゆう意味だ影雅!! 逃げる気か!?」 ゴォォォ…。 次の瞬間、私の周りに炎が渦巻き、周りが一切見えなくなった。 薄らと見える影雅を睨みながら、私は痛みのせいで気を失った。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加