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「げん…じゅつ?」
あぁ…。
言われてみればこいつは狐だ…。幻術を得意としたな。
不覚だった…。
冷静でいれば、今私はこいつの首でも持っていたのに…。
ズシュッ!
「っ…!」
私は痛みを耐えながらも、腹に刺さっている刀を無理矢理抜いた。桃色の着物は赤く染まり、血が止まりそうにない。
手で押さえても、血は遠慮なく出てくる。
このままでは…。
「逃げな…」
「!!?
なに…?」
思いもよらぬ言葉が耳にはいり、私は痛みを忘れ、影雅の方に首を回した。
体は少し動かせたが、やはり痛みであまり動けない。
影雅の手にある刀は、青い炎となり消え去った。
荒い呼吸をしながらも、私は目で影雅に問い掛けた。
“何故だ”
「……君を殺すのは僕じゃない」
「…ふざけっ…!」
ゴォォォ…。
私が立ち上がろうとした瞬間、私に行くなと言うように、青い炎が行く手を遮った。
熱さを感じない炎。
だが触れられない。
「これは情ではないよ…
ただ、君はもう満と言う逃れられない檻に入ってしまった
そこからすくい上げる事は、僕には不可能だ…」
「ど…どうゆう意味だ影雅!!
逃げる気か!?」
ゴォォォ…。
次の瞬間、私の周りに炎が渦巻き、周りが一切見えなくなった。
薄らと見える影雅を睨みながら、私は痛みのせいで気を失った。
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