其の参 神妙なる眼界物語

9/19
前へ
/89ページ
次へ
――― 美羅が消えた後、影雅はその場に膝をついた。 体は微かに震えていて、額には汗が見える。 敷かれている布団を手で強く握りしめ、何かを我慢しているように見える。 「はぁ…はぁ…」 呼吸は荒く、ちゃんと空気を吸い込めていなかった。 しまいには布団の上に倒れこみ、心臓を押さえながら蹲る。 そう、影雅は今、誰かに自分の心臓を握り締められているような、痛みと苦しみに襲われていた。 「っく… また…か…!」 この激痛は、これが初めてではないらしい。 助けを呼びたくても、大きな声が全く出せない。 力を使いたくても、痛みに邪魔をされる。 影雅はしばらくその場に蹲っていたが、だんだんと痛みは安らいでいき、最終的にはきちんと空気を吸えるようになった。 「…まだだ… まだ、僕は生きなきゃならない…」 そう言い、影雅は安心したかのように眠りについた。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加