其の壱 ただの虚ろな物語

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―貴方は何で家にいるのよ― ―はっきり言って邪魔なのよね― ―早く出てってよ!― (…思い出したくないのに…) 少女はベンチの上に足を起き蹲る。 体を小刻みに震わせ、時々泣いているような声が聞こえた。 (お父さん…… お母さん……) ―裏山の妖怪に食われてしまえばいいのに― その時、ふと少女の頭の中にある言葉が浮かんだ。 昔から裏山には、危険な妖怪がうようよいると言われていた。 今のご時世、それはあり得ないとは思ったが、まぁそんなのいないと証明した人はいない。 (自殺も考えたけど… だったら誰かのやくにたって死にたい…) そう心で思うと、少女はベンチから立ち上がり、再び暗い道を歩きだした。 『――――?』 「……?」 その時、少女は動かしていた足を止めた。 自分の頭に左手を寄せ、瞬きを何度もする。 (今…… 頭に声が……) 覚束ない声だった…。 他の音が交ざって、何を言っているかがさっぱり。 わかるのは男性の声と言うことと、何かを少女に聞いていた。 少女は少しの間立ち止まっていたが、それから何も聞こえなくなったため、再び足を動かした。
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