其の参 神妙なる眼界物語

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――― ―――― 幾多の時が過ぎたのだろうか…。私の体は泉の水に浸かり、肩と首だけが陸地にある。 気が付いたらここにいて、目を覚ましてからずっと動いていない。 「……痛みがない…」 ここは神々の泉。 回復力のある水が、私の腹の傷を癒したのだろう。 妖怪だけではない。 この泉は人間をも癒す。 木々から零れる木漏れ日が神秘的で、風が吹くと、まるで草木が歌っているかのように聞こえる。 それが子守唄かのように、私に眠気を委ねてくる。 だが私はその眠気を押し返し、泉から体を出した。 すっかりふさがった傷口を一撫でし、私は暗い森の中へと足を踏み入れた。 人間が入れば、確実に迷う。 妖怪でも、迷わない事はない。 ここは神が住むとされる森で、時々悪戯か何かで、生き物をこの森から出さないようにしている。 まぁ本当かは私にもわからない。 しばらく歩いていくと、そこには黒い霧が渦巻いている。 私はそこに手を伸ばし、ゆっくりと渦の中に入っていった。 私が渦の中に入ると、その黒い霧は消え、元の景色に戻った。
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