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「……ねえ? 今度はいつ来てくれるの?」
「呼んでくれればいつでも参りますよ? お姫様?」
「もう……そうやっていつもはぐらかすんだから。……連絡待ってる」
昨夜とは全く異なる、
軽く触れるだけの優しいキスを落とし、極上の微笑みを残して去る。
それだけで彼女は満足したように、俺に微笑みを向け手を振る。
……今日のご主人様は、楽勝。
唇に残る温かな感触をぺろりと舌で舐め取り、俺は、あても無く街を彷徨った。
所属していた芸能事務所が都合で無くなってしまい、職無しとなった俺は、完全な根なし草となって色々な女性の元へ――いや、請われれば男性の元へも行っているか―― 一晩の恋人役をこなしていた。
別に理由なんて無い。
……ただひとつ理由を上げるとすれば、少し疲れてしまったのか。
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