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ようやく、立ち止まったかと思った先は、公園内にある広場。
見つからないように、こっそりこっそり…なんて、日傘で顔を隠しながら覗き見る。
こてっと、背中を後ろへ倒し、生い茂る草の上に寝そべる男性。
(あ…。見えない)
草で顔がよく見えなくなった。私は日傘を閉じ、目を凝らしながら草の中を見た。
(むむ…。見えない)
一歩、また一歩と近づくうちに、距離は縮まり、気づいたときには足元の近くに見覚えのある顔が見えた。
(…眠ってる)
整った顔立ちに、それに、しなやかな指。
この指でチョークを握っているのが、なによりも印象に残っていた。
うちの学校の数学教師の佐伯(さえき)先生だ。
(…細い)
ぼーっと、指に見とれていると、ピクッとその指先が動いた。
(お、起きた?!)
慌てて逃げようと構えた瞬間、ぐいっと手をとられ、その力に引き寄せられた。
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