第一章 中津川環は恋を知る

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   シャレにならないくらい痛い。ただ実際のところ、こんな荒っぽい扱いを受けるのは初めてだがそれが自分に遠慮していない表れだと思い嬉しかったりもする。  こんな無遠慮な接し方、あの子以来かもしれない。ふと脳裏を不機嫌そうな顔をした妹分の幼馴染がよぎった。 「あんたは人の心配する前に自分の心配をしなさい。一番大変なのはあんたなんだからね」 「……はーい」  これまでほとんど説教らしいものを経験してこなかった私にはとても反論できそうにもない。とても身に積まされる。朋美は本当に賢いな、と思う。  そして、そんな朋美に説教ついでに訊こう、と私は口を開く。 「でも、どうしたらいいの? 私、情けないけど偽善者だから、みんなの前にいったら絶対に上辺ばかり着飾ってまた朋美に迷惑かけちゃう……」 「偽善者って……そんなかしこまるから環はダメなんだよ」 「ダメって、そんなストレートに言わなくても……」 「環はこれくらいはっきり言わなきゃ分かんないバカだからいいの」  ダメとかバカって。この友人には逆に遠慮が足りない、絶対に。もちろん怒られている身として口に出すつもりはないけれど。
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