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しかし、納得しただけだ。頭の中で理解したに過ぎない。
だからそれを行動に移すとなると、途端に頷けなくなる自分がいた。
「朋美の言いたいことは良く分かった。でも、ごめんね。私には多分できないと思うの」
朋美が面食らった顔をした。迷いなく拒否されたことに相当驚いたのかもしれない。
「ちょっと待ってよ。あんたちゃんと考えたわけ?」
「考えたわよ。だからごめんって言ったの。せっかくのアドバイスだけど、私には無理よ」
「何でよ! 環がその気になれば男の一人や二人くらい簡単に……」
そこまで一気に言い切ったところで突然、朋美が言い淀む。
しばらく私の目をジッと見つめ、真剣な面持ちでためらいがちに言う。
「あんたってさあ、もしかして男と付き合ったことない?」
「うん」
私は迷うことなく事実のみを答える。
対する朋美はあちゃーと頭をかき、自分の読みの甘さを反省していた。
「環らしいといえば環らしいというか……道理でああいう態度をとるわけだ。今すっごく理解した」
「ああいう態度って?」
「男と距離空けたがってるとこ。あんた、いちいち隣の男との距離感気にしてから。最初はタイプじゃないからとか思ってたんだけど、それ以前ってわけね」
「別にそういうわけじゃ……」
「じゃあどういうわけ?」
「……ごめんなさい」
私の完全敗北だった。朋美はそら見ろ、と勝ち誇る。
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