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ここまでコテンパンにされると見栄を張る気にもなれず、私は今まで人に言えなかった悩みを全て打ち明けていく。
「私、多分恋をしたことがないんだと思う」
「恋って。どこの乙女の発言よ……。ていうか多分ってなに?」
「そもそも恋っていう感覚が分からないの。頭では分かってるつもりなんだけど、いまいちピンとこないというか」
これまでの人生を振り返ってみて、特定の男性に特別な感情を抱いたことが私にはない。しいて挙げるとすれば、高校の後輩で同じ生徒会役員であった神名夏樹だろうか。
彼は私が面白がってが大胆に接するといちいち慌ててくれるから可愛がり甲斐があったし、かと思えば誰よりも頼もしく男らしい一面もあって。あれは私の知る恋という感情に一番近かったのかもしれない。
……ただまあ、残念ながらその夏樹は同じく生徒会で私の幼馴染もしくは妹のような存在の和泉沙耶にとられてしまったのだが。とられたというか、順当に結ばれたというのが正しい表現か。
二人を見ていると、こっちまで幸せな気持ちになれる。あそこまで自分をさらけ出せ、互いを思い合える相手が自分にもいつか現れるのだろうか。私には想像もつかない。
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