第一章 中津川環は恋を知る

15/57
前へ
/155ページ
次へ
「ふーん。そんなもんかねぇ」  朋美は呆れるというか不思議そうに首を傾げる。 「そんなに難しく考えることじゃないと思うよ、恋なんて。気がついたら落ちてるもの。それが恋よ」 「そんな名言っぽく言われても……」  パッと聞いただけではいいことを言ってるように聞こえるが、実際はただ私に説明するのが面倒で省略しただけだろう。私には何一つ伝わってこない。なによその定義。 「ちなみに参考までに聞きたいんだけど、朋美は何人の男の人と付き合ってきたの?」 「覚えてない。数えられるうちは恋がなんたるかを知らないただの小娘ね」 「…………」  何を言ってるんだろうこの友人は。一体私に何を要求しているんだろうか。これを聞くと、さっきの提案が急に不安になってきた。嫌な予感しかしない。  顔には出さなかったつもりだが私の心境の変化を察してか、朋美は冗談よ、とおばさんみたいに手を上下にパタパタさせる。派手な外見にはミスマッチな仕草だったが朋美には不思議としっくりきていた。なんかもったいない。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

362人が本棚に入れています
本棚に追加