君のまま SS

第一章 中津川環は恋を知る

　せめて介抱してあげようと席を離れようと試みたが、今みたいに男子に引きとめられて動くにも動けない。もしかしたらトイレにすら行かせてくれないのかもしれない。セクハラですよ、これ。
　どうしたらここまで自分本位の行動がとれるんだろう。怒りを通り越して可哀そうに思えてきた。

　一応知識としては大学の飲み会というものを分かっていたつもりだったけれど、とんでもなかった。ここまでひどいものなんて。何かを期待して参加したわけではないけれど、失望に近いものがあった。

　クラスメイトが三十人出席でなおかつ狭い座敷に詰め込まれたということで、自然と男女の距離も近くなる。男子はあからさまに嬉しそうだが、私はどちらかというと嫌だ。

　ほぼ初対面の人たちにパーソナルスペースを侵食されるとどうしたらいいのか分からなくなってくる。生徒会で鍛えたポーカーフェイスで今のところは乗り切っているけれど、いつまで続くのか心配で仕方がない。できるならもう帰りたい。

　男女半々の面子のはずなのに、なぜか男子は座敷を半分に割ってみんながみんな私側にいる。理由は…………多分私なんだろう。
　自意識過剰だと思い直そうとするけれど、そのたびに寒気を覚える視線を感じて自分の予想が当たっていることを思い知らされる。