第一章 中津川環は恋を知る

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 朋美は申し訳なくてしょんぼりする私を見て苦笑し、でも、とつなぐ。 「環は偉いよ。どれだけ自分で得してもそれを誇示しないし、どれだけ自分で損してもそれを悲観しない。良いところも嫌なところも全部自分の個性として受け止めてる。環のそういう所、あたしけっこう尊敬してるんだ」 「……ごめんね朋美。私のせいで嫌な役させちゃって……」  朋美は本来、周囲に波風を立ててまで自分の意見を貫くほど自分勝手ではない。他人を気づかえる優しい子だ。そんな朋美にみんなから反感を買うような態度をとらせたのは、私がしっかりしていないからだ。  私はいたたまれなくなり服の裾をギュッと掴む。  しかし、私の気持ちに反して朋美はいたってお気楽だった。 「いいのいいの。あんな自分勝手なやつらに合わせる必要なんてない。もし好き放題やりたいなら他でやらせておけばいいんだよ」 「でも、あんな憎まれ口言って。来週からきっと大変だよ。朋美みんなから人気あるから」 「あんたがそれを言うかぁ~」 「うー、いふぁいってばー」  生意気なー、と朋美の手が私の頬をつかむ。ちぎってやるといわんばかりの力でこれでもかというくらい頬を蹂躙されてくぐもった呻きがもれる。涙が出るほど痛くて抵抗してみたがそんな抵抗も虚しく数分にわたって好き放題され、ようやく解放されると私はジンジンと痛む頬をなでた。
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