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「俺はね…仕事も失って…女房も娘も…家を出てってしまって、
何にも残っていないんだよ。」
泣き落とし?
でも、今は下手に何かを言って興奮させても仕方ないので、
黙って小牧課長の顔を睨みつけるのみ。
だって、動きを観察してなきゃ
力では勝てないんだもん。
咄嗟の時は、社内講習で習った護身術…
上手に出来るかな?
そんな事を考えながら黙って聞く。
「 あんたはさ…被害に遭わなかったんだから…
なんで正義感出して…パワハラの相談に行っちゃうかな?」
一歩…また間合いを詰められるけど、
もう後ろには逃げ場が無い。
負けない…と言う気合だけで必死になって小牧課長を睨みつけると、
被っていた帽子を投げつけられ、
「何だよ。その目は!」と怒鳴られる。
怒鳴られた経験は無く、
あまりの大きな声に首をすくめて
小さく悲鳴を上げる。
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