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メメディの一言に、ダミアンの眉が強く寄る。いきなり主の名が引き合いに出されたサイトバラッドが目を見開く中、メメディはこの話題で間違っていなかった、と悟る。
彼の目の色が、【金】とまではいかなくても一瞬動いたのをこの目で見たから。
「突然失楽園の転覆を謀るとか。あの純粋な彼がこんなことを考えるとは思いにくいよね」
「────────誰かがジュニアに入れ知恵したと?」
メメディがわざとらしくうーんというと、ダミアンが食い気味にそう言ってきた。
彼の突然の反応にファウストと灰被は驚いているようだったが、雪做は小さくなるほど、と呟く。……意外と扱いやすいかもしれないな、この子は。
「さぁ、ね。その真偽のほどを俺は知らないけど、有り得なくはないんじゃないかな?」
「……」
メメディの言葉をダミアンは真剣に考え始めたようで、口元に手をあてている。
「手っ取り早く本人に聞いてみたらどうだい? どうして今回こんなことをしでかしたのかも、誰の入れ知恵なのかも、ね」
メメディが言うと、ダミアンがはぁ、と息を吐く。
「できると思っているのか? 彼らが居るのは【エデン】。四天王しか入ることのできないエリアだ。いくらグレーテル一族当主であろうとも、あの場所には……」
そこまで言いかけて、ダミアンの言葉が止まる。彼の目の前にメメディがある物を差し出したからだ。
「どんな建造物にもあるものだよね? 【裏口】ってやつ」
メメディが晒したもの。それはグレーテル一族に伝わる【エデン】裏口の鍵だった。
四天王第1位の座が確約されているアーカイバー一族とは違い、グレーテル一族にはその権利はない。しかしながら失楽園の双翼の片方として、グレーテル一族もまた【エデン】を管理する役割が表立っては居ないが付されていた。
とはいえこの鍵は【裏口】という名に恥じず、全ての部屋に入り込めるわけではない。唯一最上階の部屋につながる踊り場へ行くことのできる階段の鍵なのだ。勿論この鍵で最上階まで行ったのちに降りるという方法も取れなくはないが。
メメディはこの鍵を利用し、娘・ を最上階へと運び込んだ。そして今も行こうと思えば、娘のいる最上階へ向かうことができる。
そして恐ろしいことに、この鍵は一本だけではない。元々はこの一本だけだったのだが、今はもう一本存在している。スペアというものが。
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